「ブランド」と「価値」で売るその戦略
取締役営業本部長 川上 康昭 氏
昭和6(1931)年、竹馬治郎氏が東京であられ製造で創業し、同8年に立ち上げた株式会社中央軒をルーツとするぼんち株式会社。揚げ米菓が主力の同社は、コロナ禍中の2022年2月に始まったウクライナ紛争後、パーム油が高騰して、大きな打撃を被ってきた。同年の秋に2度の減量対応を行い、この8月と9月には、2段階での製品値上げに踏み切った。コロナ禍明けの主需要期に、値上げで挑む同社の施策を聞く。
米菓需要が拡大か!?
減量では追い付かない
売りの最前線に立つ川上康昭営業本部長は、「昨年に2度の減量をおこなったが、ようやくこのところパーム油の価格が落ち着く気配が見えてきたものの、その半面でこれまで安かった国産米が値上がりしそうという話が出てきた」と、語る。コロナ禍が明けて、訪日外国人や若者などの人流が戻り始め、活況を伝える中で眉を寄せた。
小麦粉、砂糖に始まり食用油が値上がりした。分けても食品業界が多用するパーム油の暴騰は、大きな打撃だった。その後も、円安により輸入原材料が軒並み値上がり。また原油やガスの価格の上昇が追撃する現状下では、回復への見通しは立っていない。
「値上げ幅はアイテムによりますが、8%から20%です。第一陣に『ぼんち揚』や『海鮮』シリーズなどのレギュラーを。第二陣は5パック、10袋ものなど4アイテム。商談は先行した大手さんの後追いという形になったことから、お陰さまで事情に理解を頂き、スムースに受け入れてもらえた。今後も原料事情は不透明な部分もあり、先行他社さんのプライスラインに近づけていくということで、ご迷惑をかけないという意味でも“価格戦略”ではなく、“価値で売る”方向で行きたい。値上げの結果、数字が落ちてくることも想定し、10月からマーケティング部が企画したキャンペーンを張って、対応を図る予定だ」
今秋に再注力する“こだわり路線”の『やみつき米香』シリーズ3品
値上げ幅は、商談前の原料事情をベースに作ったもの。秋に入って以降の変化は想定できないため、それは加味されていない。拭い切れない不安が、そこにあるのである。とはいいながらも、コロナ禍中から好調な消費マインドは変わらず、米菓界にとっては決して悪くはない、という状況である。ぼんちでも、そこが幾らかの“楽観”要素になっているようだ。
「昨春の事故で三幸さんの商品がストップし、ウチを含め、多くのメーカーさんがその穴埋めをした。昨秋から三幸さんの商品が戻り始めましたが、三幸さんが復帰すれば外される、と思っていたものが、存外継続されていて、今も変わらず、忙しいというところが多いのではないか」と、指摘する。
この現象について、マーケティング部の東鶴千代本部長は、
「コロナ禍が明けたといわれても、以前のように外飲みを謳歌するには至っていない。自宅で過ごす巣ごもり消費の一環で、家飲み需要は依然健在だ。米菓はおつまみとしても引き続き消費されていく」と、分析する。
米菓はおやつ、小腹満たし、そしておつまみとして、幅広い世代に愛され、食シーンの広さを持つジャンル。さらに、ロングセラーが持つブランド力の強さも、見過ごせない要素である。
「それを実感したのが、4月に実施した『ぼんち関西ソウルスナックキャンペーン』で、あの時期に大きなヤマを作ってくれて助かりました」と、川上本部長は振り返る。
このキャンペーンはマーケティング部が、関西エリアを対象に『ぼんち揚』に対する事前のアンケートを行ない実施されたもの。関西には熱狂的なファンが多い『ぼんち揚』だが、
「何と91%が空腹時に“めっちゃ食べたい”という答えを寄せてくれた。その調査結果をパッケージにした限定商品を作って、打ったキャンペーンでした。自社のことではあるが、発想と目の付け所が良かった。ただ、関西限定という点で、関東では関西ほどにはブレイクしなかった。だから、この秋は“全国版”で、とリクエストした(笑)」と、川上本部長は語った。
この秋、もう一つ、ぼんちには戦略がある。「価値で売る」の柱。素材や製法にこだわり、一昨年秋に発売した『やみつき米香』(写真下)シリーズの再注力である。
(次号へ続く)