紙粉が出ない“新・キングドライ”
米菓メーカーにとって、なくてはならない陰の立役者的存在の㈲坂本石灰工業所(熊本県玉名市、坂本達宣社長)。同社は、江戸時代後期に創業し、有明海で採れる海苔の品質保持のため、66年ほど前に日本で初めて石灰乾燥剤の製品化を実現した先駆けである。
そうした先進的なDNAは、現在の事業にも脈々と受け継がれている。品質第一をテーマに、充実した研究開発体制による革新的なものづくりが同社の持ち味である。なかでも熊本大学と共同開発した『乾燥剤I・C(Intelligent Calcium)』は、水をはじく構造により、急激な温度上昇が起こらない、“世界初”の画期的な石灰乾燥剤だ。
通常の石灰乾燥剤は、水に接触させると300℃近い高温を発生するため、高齢者や子供が誤って口に含むなどの事故例が年間100件ほど報告されている。しかし、経済産業省のセーフティデザイン賞金賞の受賞や、米国食品医薬局(FDA)からの“お墨付き”もある同品は、非常に強い乾燥力を有する石灰の特長と、火傷の心配がないという安全性を両立した。
また、看板製品の『キングドライ』シリーズには、不織布包装のスタンダードと、ナイロン包装の『新・キングドライ』(写真)という2タイプを用意。後者は強度が高いので破れにくく、紙粉が出ず衛生的。裏印刷のため、インクが直接食品に触れないというメリットがある。
坂本社長は言う。「製品ごとに適した乾燥剤のタイプ・サイズは意外と知られていない。当社にはテスト機があるので、米菓などそれぞれの製品特性に合わせた乾燥剤を提案できる」。
坂本社長にとって、これらの石灰乾燥剤はまだ完成形ではないと考えている。水分による高熱の発生や体積が膨張せず、フィルムが破損しない石灰乾燥剤が完成形で、試作品はできている。あとはコスト面で折り合いがつけばとのこと。こうした飽くなき探求心と真摯なものづくりに対する評価は、米菓業界からの絶大な支持に表れている。