かりんとう最前線
用途開発によって、日本の伝統菓子の代表格である“かりんとう”の新しい可能性がひらけつつある。東京カリントは一昨年の創立70周年を機に、ギネスへの挑戦や『くまモン』『アンパンマン』とのコラボ、「砕いたかりんとう」の提供、若手社員による開発プロジェクトの発足など、リーディングカンパニーとしてこれまでになかった試みを加速させている。ここにきてその成果や手応えを感じはじめていると、常務取締役で営業開発本部長の熊本徹也氏は話す。
奈良時代に遣唐使によってもたらされたとされる“かりんとう”は、日本最古の伝統菓子の一つとして長い年月をかけて親しまれてきた。
しかし近年は、人口減少と反比例するようにチョコレートやビスケット、米菓など他のカテゴリーが伸長する中、微減微増を繰り返し、停滞気味だと熊本氏は語る。「伸長しているカテゴリーは、何かしらの仕掛けをしてきた。その結果だと考えています」
そこで同社は、用途開発やキャラクターコラボのほか、新プロジェクトを発足するなど、かりんとうの魅力をさまざまな角度からアピールする活動を活発化させている。
なかでも“自社製品について既存の市場以外での活用用途を見出し、新たな用途開発につなげた”好例として挙げられるのが、ドトールコーヒーとのコラボである。
同社とのコラボアイテムとして登場した『ブリュレ仕立ての黒糖ミルクレープ~沖縄県産黒糖使用~』は、定番の人気アイテム『ミルクレープ』を、黒糖風味のホイップクリームで仕立てたもの。天面を香ばしくブリュレし、東京カリントの「砕いたかりんとう」をトッピングした。期間限定品として、当初は3月23日から4月末までの販売予定だったが、好評につき8月末まで期間が延長された。そのため「砕いたかりんとう」の納入量は480kgから4倍強の2tまで膨れ上がった。
これまでアイスのトッピングなどに同社の「砕いたかりんとう」が使用された例はあるものの、それは納入先で“砕かれて”いたものだ。また、これまでも大手外食チェーンからの受注もあったが、「砕いたかりんとう」を量産するには、新たに設備投資が必要であり、エビデンスを得て品質を担保するための手続きを踏まなくてはいけない。
同社はそうした壁を取り除くべく設備を増強し、検査機関を通じて過酸化物価や賞味期限のエビデンスを取得した「砕いたかりんとう」づくりに着手。先述のドトールコーヒーとのコラボを皮切りに、6月1日からは神田明神カフェ マスマスの『桝パフェ』(写真上、『蜂蜜かりんとう 黒蜂』使用)、7月3日からは大戸屋の『かりんと抹茶アイス』に採用されるなど、アイス・スイーツカテゴリーに浸透しつつある。これらをきっかけに、製パン業界や製菓材料をあつかう商店・問屋、食品系などからの引き合いが多くなっているとのことだ。
熊本氏は、「SDGsやフードロスの観点から、こわれなど割れ欠けした製品を利用し、アップサイクルに資する取り組みを考えています」と、今後の抱負について述べる。これ以外にも、健康系をはじめとする他のカテゴリーとのミックスものも進行中だという。
こうした取り組みを進めるきっかけとなったのが、『リストラなしの年輪経営』(光文社)の著者である、伊那食品工業㈱最高顧問の塚越寛氏だと熊本氏は話す。「以前から塚越氏の考え方に共感していました。著作の中には用途開発のことがあります。寒天を食品だけでなく培地や医薬用にと広げていったように、かりんとうの用途を年輪のように少しずつ広げていきたい」
他方、弊紙4月17日発行号で紹介した、若手社員による新製品開発プロジェクトでは、早くもいくつかの試作品が完成。発売に向けて小売りとの協議がはじまっているという。
キャラクターコラボも好調だ。くまモンと同社キャラクター蜂蜜坊やをパッケージにデザインした『142g ハロウィンドーナツ』(写真下)を9月18日から発売。コラボ3年目となる同品は、ハニー味とパンプキン味の2種類のアソートで、前者は生地に蜂蜜と加糖練乳を加えている。後者は熊本県産万次郎かぼちゃ粉末を生地に練り込み、シナモンを加えて仕上げた。子供から40代女性、ファミリーなど、幅広い層をターゲットにしている。OP(想定小売価格399円前後・税込)。