2023初夏売れ筋特集号 米菓・中堅&関東

大量受注ピーク過ぎるも現場の忙しさは続く

 揚げが主力のぼんちでは、「三幸さんが操業を再開されても、定番になった製品は外れず、なかなか楽になれない。そこに加えて、PBやお手頃価格で訴求するチャネルの動きが良いので、引き続き現場は生産に追われている」という。

 この春、主力の『ぼんち揚』が、地元の「愛され米菓」ということで、多くのマスコミが注目し、取り上げたことから動きが非常に良い。

 同社では、油の高騰からコロナ禍の下、昨年までに主力製品群の規格変更を2度実施したが、高騰分を補えていない。『ぼんち揚』ほか、この秋に向け価格上げの案内を始めた。過去2度の減量のダメージは無かったが、棒上げでは目下、神経を張り巡らしているようだ。

 主力品の人気と油の高止まりの痛し痒しの事情から「値上げ後の反応を見て、必要なら需要喚起のキャンペーンも考える」

 コロナ禍で顕著な動きを見せたおつまみ製品は引き続き今夏の戦略品だ。

 「コロナ禍明けといっても、盛大に外呑みとはいかないためか宅飲み需要は堅調。ここ数年、右肩上がりの『ピーナツ揚』、また『ポンスケ』や『綱揚あられ』も堅調だ」

 大手企業の賃上げがこの春はマスコミに大きく報じられたが、まだまだ世の中の大勢は、生活防衛意識から財布のヒモは固いまま。価格と価値訴求のバランスをとりながら、この夏を乗り切る。

 今夏の注力品として、2年前の8月に発売した伝統製法による価値訴求のシリーズ『やみつき米香』(写真上右)3品に力を注ぐ。適量サイズ『つぶつぶ黄金煎』『やわらか揚もち』『黒胡椒せんべい』である。

 「昨年の今頃は販促や新規を4割くらい断るなど、異常なくらい特殊な状況だったが、傾向的に大きな違いはないとはいえ、少し落ち着いてきた」と話す天乃屋の大砂信行社長。現在は『歌舞伎揚』『瑞夢』『古代米煎餅』など主力アイテムの供給に注力するなど、SKUを絞りながら需要増に対応しているという。

 そのためにも、生産ラインの人手不足解消は重要課題。福島の工場では、昨年末から人員を増強し、生産・供給能力を確保していると大砂社長は話す。

 夏から秋に向けては、8月にハロウィン製品を発売する予定だ。また、ぷち歌舞伎揚シリーズの新製品として『同夏レモン味』(40g・希望小売価格110円、写真上左)を6月19日からセブン-イレブン、7月3日から一般発売する。

 同品は、お茶請けやおつまみにも向くスナック感覚で食べられるプチサイズのアイテム。生地を高温で一気に香ばしく揚げることでサクサク食感に仕上げ、そこに瀬戸内産レモンのフレッシュな香りと上品な酸味、爽やかな風味を加えた。そんなレモンテイストを好む20~40代女性をターゲットにしている。

 ポジショニングは、おつまみとパーソナル向けに入る。米菓を含む他のスナックとは異なる路線になる。また2月に上市した『じゅわり』は、堅焼きともぬれ煎餅とも違う、しっとり+サクサクの新食感に、濃厚な醤油ダレを絡ませた独自性の強い製品だ。

 大砂社長は、「大手と似たような製品をつくっても仕方がない。マーケットインという思考も大事にしつつ、自分たちがいいと思うものを提案していく」と、同社のものづくりの姿勢について話す。

 恒例となった抽選で5000円が1000名に当たる「歌舞伎揚売上№1キャンペーン」や「Twitterでプレゼントキャンペーン」は、7月31日まで実施中だ。

 

 今の規模感をキープしながら、粛々とできることに専念したいと語る金吾堂製菓の碓田剛士社長。コロナ禍がひと段落し、人流が活発化しているが、その影響を受ける可能性があると考えてのことだ。コロナ禍は流通菓子にとって追い風だったが、今後は外食需要が伸びる分、落ち着くのではないかと懸念している。

 碓田社長は「SKUを絞って『厚焼き』や『ほろほろ焼き』などの主力アイテムの生産に集中している。新製品というよりは既存品のブラッシュアップや、米菓ユーザーの間口を広げるべく、Facebook、TikTok等のSNSを通じた施策にも努めたい」と話す。

 そうしたなか、中元シーズンになって進物需要が高まっている。本社直売店「如庵」の担当者によると、求められる商品の傾向が変わってきたという。コロナ禍よりも単価の高いものが動いており、新規も増えている。コロナ禍前の状況に近づいているという。

 そんな進物をお得に購入できる「夏の大感謝セール」(写真中)が、7月5日から8日まで同店で開催される。夏と冬の年2回行われるビッグイベントで、定番品はもちろんのこと、通常値下げのない進物をはじめ、通販オンリーのアイテムも用意。昨年の夏はコロナ禍の影響を受けたが、昨冬の「歳末大感謝セール」には多くの来場者があった。今回は、さらに増えることを見込んだ品ぞろえで対応する。

 もちとうるちの総合メーカーの丸彦製菓は、栃木を代表する観光地日光鬼怒川の入口にあたる今市に工場を構える。観光客のお土産処として、工場に設置された大規模な直売店「名水の郷 日光おかき工房」は、観光客のほか、同社のファンが近隣から集まる人気スポットである。ここ3年間に及ぶコロナ禍で、観光客が激減していたが、この春先あたりから活況を取り戻しつつある。

 「5月の連休明けに、コロナの感染が減少し、インフルエンザと同じ5類になったことから、中旬過ぎから団体の観光バスが動きだした。温泉を楽しんで帰り、お土産を求める団体のお客様が、この夏場に向けどこまで戻るのかが楽しみ」と、山田邦彦社長。

 同社の売りは一般チャネル、通販、そして実店舗(3店)の3本柱。コロナ禍による直販の減少は厳しかったが、ようよう光が見えてきた。

 この夏場は直売に注力する一方、昨年の三幸製菓の操業休止から、受注をこなすために実施した絞り込みを解除することも課題。大量受注のピークは過ぎたが、相変わらず現場は多忙だ。

 「通販のお客様から休止した製品を買いたい、という問い合わせが多い。箱買いですね。こうした有難いファンの要望に、生産ラインの効率化を考えて応えなければ…」

 売れ筋はコロナ禍から続く大袋。飽きずに食べ

続けられ、ファミリーユースなどでも重宝するおかきとせんべいのミックス『味の楽園』(写真下右)や、6種の詰め合わせ『おかきの饗宴』などが人気だ。

 先頃、浪花屋製菓の事業を承継した、業務用柿の種の老舗で知られる阿部幸製菓。阿部幸明専務は、日本の食料自給率を高めることが急務であり、米の生産と消費を増やすことが重要だと考えている。それに基づくかたちで、米を原料としたさまざまなカテゴリーに挑んでいる。

 そのひとつが米粉麺の製造・販売である。2019年から開発をスタートし、現在は米粉麺の専門店を新潟県下で3店舗展開するほか、一般にも販売している。

 米粉麺について大村敏史常務は、「ウィズコロナ時代になって風向きが変わった。輸入品の小麦価格は世界情勢の影響を受けるが、国産米の相場は安定している。グルテンフリー、のど越しの良さというメリットから、引き合いが増えている」と話す。

 人流の活発化とともに、『柿の種のオイル漬け』などお土産系のアイテムも伸長している。EC以上にリアル店舗での売上がアップしている。昨年から展開する『柿の種のオイル漬け味のプレッツェルです。』(写真下左)も順調に推移。引き続き他のカテゴリーの開拓も進める。

 また直近では、OEMを含めた露出が増えつつある低糖質版を含めた『パスタデスナック』も伸びているという。

 大村常務は「健康へのアプローチと嗜好品としての美味しさが、普遍的な価値として評価されているのでは」と話す。NBの『かきたね』については、近いうちにラインアップの強化を図る予定だ。