ストーリー性重視の取り組み増える
2月に『無限のり』が発売2日目で出荷100万袋を突破。同時に、『亀田の柿の種なぜうまシリーズ』2品を発売し、同ブランド全体の月間出荷実績において過去最高を記録するなど、好調の亀田製菓。3月末発売の『ハッピーターン スパイス』も、同ブランド初の公式ライバルという切り口が話題となり、LINEニュースなどでも取り上げられるなど、多くのメディアから注目を浴びた。
そんな同社が直近から初夏以降に注力するのは、アウトドアやお盆の帰省などに伴う家族での外出シーンに向けた提案である。
同社経営企画部は、「新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、外出する機会が増えると見込んでいる。米菓は個包装が多く携行性も高いので、その特徴を活かしたい」と述べ、コラボやユーチューバーを起用した発信など、多方面からアプローチする。
その中心となるのは『亀田の柿の種』ブランドだ。4月には人気アウトドアカジュアルブランド「CHUMS」とコラボして話題となった。
異業種となる「CHUMS」と、コラボ第1弾となる『亀田の柿の種チャムスオリジナルスパイス』(写真上右)を期間限定で発売。数あるアウトドアブランドから「CHUMS」とコラボしたのは、同ブランドがスパイスを発売していたことや、ファミリー層に向けた入門的な立ち位置という間口の広さが、『亀田の柿の種』の特徴に合っていたからだと同社経営企画部は語る。第1弾はすでに販売を終了。6月末には第2弾の発売を予定している。ほかレギュラー製品についても、行動食としての認知拡大に努めた施策を展開する方針だ。
ロングセラー製品の筆頭である『雪の宿』を中心に、主力ブランドが復帰前より好調の三幸製菓。直近では、混菓製品として先頃上市した『わが家のテッパン』(写真上左)も、発売当初から好評を得ている。
その理由について同社は、「コロナ禍を経て家飲み需要が高まり、お酒の楽しみ方そのものが多様化していると考えている。それらを背景として、米菓をはじめとする複数の菓子類を一袋で楽しめる『混菓』カテゴリーの需要が伸長している。『わが家のテッパン』は、質と値ごろ感に着目し、価値あるものを適切な価格で提供することを意識して設計した。好調な市場とそんな商品の価値が支持されたのではないか」と分析する。
同品は、「いか豆」「えびあられ」「小えび」「のり塩せん」「いか天すなっく」「梅塩揚げ」「ちーずすなっく」「黒豆あられ」といった、バラエティ豊かな8種の素材を楽しめる、夏のおつまみ需要にも応えるアイテムだ。
同様に、さまざまなあられを一度に味わえる『粒より小餅』や、アーモンドとクリームとお米のクラッカーを組み合わせた『チーズアーモンド』も、おつまみシーンに寄り添う製品である。
その『チーズアーモンド』をはじめ『新潟仕込み』『丸大豆せんべい』といった馴染みのある製品の価値を見直し、それぞれの核となる強み(特徴)をキープしつつ、さらに伸ばすようなリニューアルを実施した。これは同社が新たに掲げる「優品適価」に沿った施策と考えられる。具体的には『新潟仕込み』は、「粒ごと製法」によるツブツブ食感をより味わえるように、国産米100%使用としている。
先ごろ社長交代を発表するなど、国産米100%使用という原料へのこだわり、また技術へのこだわりを堅持しつつ、新製品以外でも新しい動きを加速させている岩塚製菓。
そのひとつが、ブランドイメージや企業の知名度向上のための情報発信と、それに伴う社員への働きかけである。
4月下旬よりスタートした同社の公式TikTokは、昨今のキーワードである「お米となかよし 岩塚製菓」をテーマとしたもの。担当者によると、「再生回数は目論見以上」だという。
また、タカラトミーグループのおしごと体験アプリ『FamilyApps(ファミリーアップス)』の新コンテンツに同社の『おせんべい・おかきをつくろう』が加わった。これは日本のお米からせんべい・おかきをつくる米菓工場の体験アプリで、日本の伝統的な食文化である米菓の認知度を高める目的のほかに、社員に対しても、自社がどのようなことをしているのかを知ってもらうための施策だと担当者は話す。
夏に向けては、多様化する「お酒を楽しむ時間」に対応した製品を期間限定で発売する。
6月26日に発売の『えび天 香ばしさ引き立つ塩味』(写真下右)『イカ天 瀬戸内レモン味』は、そのひとつ。ザクッとした歯応えの米菓スナックだ。メタリック調の色彩の正方形のパッケージは、上部をカットすると自立する仕組み。
また継続的に伸長し、着実にリピーターを増やしている『田舎のおかき』シリーズは、増強済みの生地生産能力に合わせて、設備増強を今秋に実施。品薄状態解消に向けた取り組みを進行中だ。
健康・環境への配慮と、脱和風米菓という新路線を打ち出した栗山米菓は、玄米100%使用と紙パッケージを採用した『まるっと玄米柿の種』をはじめ、スナックライクな『さくほろ』シリーズや、「おから」や「さつまいもの皮」を使用するアップサイクル製品『ろっから堂』など意欲的なアイテムを登場させている。
今夏は、それらの新製品と『ばかうけ』『瀬戸しお』といった主力品に注力する。
その期間限定品が、6月19日発売の海老を練り込んだ揚げせんべいにラー油で味付けした『瀬戸しおラー油味』(14枚、NPP参考小売価格220円前後・税別、写真下左)だ。
また、塩うめ味、塩わさび味、塩バター味の3種を楽しめる『ばかうけ塩味アソート』(24枚、NPP参考小売価格300円前後・税別)を6月26日から発売する。
前者は高級SMチェーンなどでトレンドな味覚になっている海老とラー油を組み合わせたもの。夏向きのサクッとした食感とラー油の旨辛さがポイント。後者は手軽に夏場の塩分補給もできるアイテムである。いずれも今年はいつもより販売期間を長めに設定している。
昨年との状況の違いについて同社マーケティング部は、「今年は鶏卵不足の絡みで半生菓子など別カテゴリーの供給減により生産がひっ迫している。8月には『ばかうけ』の生産拠点を新発田工場からばかうけファクトリーに移し、生産体制を再編する。新発田工場の移設後のラインは、新製品や他の製品の生産に振替え、需要増に対応していく」と話す。