お菓子のソフトさとしっとり感が持続
ミヨシ油脂の『パールインプラス』(写真)は、お菓子のソフトさとしっとり感を持続させる酵素配合の機能性乳化油脂だ。乳化剤と酵素の相乗効果で高い食感維持機能を発揮するだけでなく、複数の酵素の組み合わせによって焼成品の焼き縮みを抑制。老化によるもろさやざらつきを抑制し、なめらかな食感も持続する。
『パールインプラス』は2021年から商品化されているが、食品本部技術開発MD部MD第二課の藤原亜衣氏によると、開発のきっかけは、「製パン業界では酵素を使ってパンをやわらかくしているが、お菓子でも酵素によって美味しさを長持ちさせることができないか」と考えたからだという。賞味期限が延長できれば、フードロス問題の解決にも繋がる。
開発に着手したのは、「私が担当して2〜3年経つが、前任者がいるのでもう少し前」(藤原氏)になる。長い年月を掛けて開発した背景には、どんな苦労があったのだろうか。
「酵素は、加熱すると活性が落ちてしまう。お菓子ではいろいろな使われ方があるので、あらゆる製法に対応できる形態を模索して、流動状にするのが大変だった」。
流動状にしたことで、良好な作業性を実現。溶かす必要がないので、酵素の失活を防いで効果を発揮できる。また生地中の気泡を壊しにくいため、スポンジケーキや焼き菓子など多くの製法に対応。自社製グリセリンが、製品自体の保存安定性も向上させている。
こうした特性から、フィナンシェ、マドレーヌ、スポンジケーキ、ドーナツなど、幅広いアプリケーションに使用可能だ。
同社では、『パールインプラス』のどら焼きへの効果を公表している。
どら焼きは、パサつきやすいアプリケーションの一つ。焼成時間が2分程度と短く、酵素が効く時間も短いが、しっかりと『パールインプラス』の効果が表れていることが確認できた。常温保存では経時変化を抑制し、やわらかさとともにしっとり感も維持することができる。焼成90日後においてもデンプンの老化によるざらつきを抑制し、舌触りのなめらかさを維持。またデンプンが老化しやすいチルド保存でも、ソフトさとしっとり感を維持できる。
「舌触りのなめらかさを持続させるのが、他の製品にはない特徴。ざらつきが課題となる米粉との相性もいい。しっとりさが特徴のブラウニーに入れると、口どけの良さに繋がる。サクサクとしたスナック菓子でも、食感改良効果が表れる」と、応用範囲は幅広い。
実際、ざらつきの抑制効果が評価され、お土産菓子で採用しているところもある。
発売されてからは、「期間限定品に採用されるなどスポット的に動いていたが、1年ほど経った頃から堅調に推移しはじめ、徐々に定着してきた」。
こうした製品は、一度採用されると長く使い続けてもらえるが、それまでの道のりは長い。
「当社でも長い目で見ており、少しずつだが着実に増えてきている。今後も色々な企業に随時紹介しながら課題解決に貢献し、定着化を目指していきたい」と、自信をうかがわせた。