“多刀流”で「心とからだの健やかさ」に貢献
アサヒグループ食品は、ベビーフードからシニア食品まで“多刀流”の製品ラインアップを揃えることで、幅広い世代のライフステージと様々なシーンに貢献し、消費者の「心とからだの健やかさ」を実現することを目指している。川原社長は、2021年3月の就任以来、各ブランドの強みを生かしながら、変化に対応した取り組みを継続的に実施してきたことで、「力強く成長できた1年だった」と振り返った。
おいしさを限りなく追求
川原社長をはじめとした社員の名刺の裏には、同社のブランド・ロゴが印刷されている。『ミンティア』『アマノフーズ』『和光堂』『ディアナチュラ』『1本満足バー』『スリムアップスリム』『パーフェクトアスタコラーゲン』『エビオス錠』『クリーム玄米ブラン』『バランス献立』『素肌しずく』『カルピス健康通販』と、各ブランドがズラリと並ぶその上には、新たに制定した同社の長期ビジョン“私たちは、『おいしさ+α』を追求し、『心とからだの健やかさ』の実現に貢献する企業を目指します”と書かれている。
「これを見れば一目瞭然。当社のことが分かっていただける」。
名刺に印刷したのは、この長期ビジョンを社内外に広く浸透させるためだ。
「1年かけて考えてきたので、私たちの強い思いが込められている。『心とからだの健やかさ』は両方とも大切であり、私たちはそこに貢献できると自負している。それは、これから30年経っても50年経っても変わらないだろう。人類にとって大事なことだから。どういうルートや方法でそこに到達するかは、私たちに強みがないと実現できない。その強みは何かと言うと、もう一つの価値である『おいしさ+α』だと思っている」。
こうした付加価値は、コロナ禍や原料の高騰など食品業界をめぐる環境が激変している今だからこそ、改めて必要とされている。一方で、消費者は〝おいしさ〟だけでは納得しなくなってきていることも事実。価格以上の価値が得られるかどうかを常に評価されることを忘れてはならない。
「そこで私が考えているのは、『おいしさ』と『α』は並列であるということ。食べ続けてもらえないと、『+α』を訴求できない」と川原社長は力説する。
「食品会社がおいしさを追求するのは当たり前のことだが、それは先の見えない果てしない道でもある。味覚には個人差がある以上、おいしさは定量化できない。それでも、多くの人が共通しておいしいと思うものを、私たちは一生懸命追求し続けている」。
例えば『1本満足バー』。プロテインシリーズの好調もあって、2021年の販売実績は前年比116%と2桁増で推移している。
「なぜこんなにも伸びているのか、その要因を調べてみると、“おいしい”からだった。プロテインの含有量が多いとか、パッケージが素敵だとか、そういう理由なのかと思っていたのだが」
意外な結果に、「やはりおいしくないと食べ続けてもらえない」と意を強くした。
おいしさはこれまでにも追求し続けてきたのだが、当たり前のことなので特にその点を意識することはなかった。だがそれは、同社の最大の強みであることに気が付いた。
「以前から価値あることをやっていた。そこを改めて認識して言葉にしたのが、長期ビジョン。『おいしさ』と『α』の両方とも、果てなき道を行く、ということを意味している」
それは、終わりのない長い道のりを歩み続ける覚悟を決めたということ。
「大変ではある。が、メーカーの立場からすると楽しくもある。私たちは幸せな生活を届けるために、良い商品を限りなく提供し続けていく。そうすることで私たち自身も発展し続けられたら、世の中も少しずつ良くなっていくのではないか」。
(次号5542へ続く・全3回)
川原 浩(かわはら・ひろし)
1966年生まれ(55歳)。1990年、慶應義塾大学経済学部卒、日本長期信用銀行(現・新生銀行)入社。以降、銀行や投資会社に勤めた後、2020年3月に専務としてアサヒグループ食品に入社。2021年3月から現職。