カンロ創業110周年 特別企画 三須和泰社長インタビュー

キャンデーの未来を創造する

需要がないなら生み出せばいい!

 今年、創業110周年を迎えるカンロは、新たな企業パーパス“Sweeten the Future~心がひとつぶ、大きくなる。~”を掲げ、人と社会の持続可能な未来に貢献していくことを目指している。キャンデー№1メーカーとしての地位に安住することなく邁進し、「キャンデーの未来を創造していく」と高らかに宣言する三須和泰社長に、製品を創造する力、これからの同社や業界の在り方、展望などについて聞いた。

 2016年3月に就任した三須社長は、翌2017年には40年ぶりにCIを変更し、“糖と歩む企業”としてキャンデーNo1 企業となることを表明。その宣言通り、販売金額の市場シェアはトップをキープし続けている。

 だが、2020年に新型コロナウイルスの感染症が拡大し、人々の生活や価値観が大きく変化した。2020年夏に発表を予定していた中期経営計画は見直され、2021年2月に改めて「Kanro Vision 2030」を策定。“Sweeten the uture”をビジョンに掲げ、「素材と機能を軸とする製品・サービスで、健康と笑顔に満ちた未来を創造する」ことを誓った。

 その背景について、「過去に例をみない未曾有の事態に直面し、市場全体は尋常ではない打撃を受けた。それと同時に、健康意識の高まりやネットの利便性が改めて見直されるなど、新たな価値観も生まれている。従来の常識の範囲内での企業活動を改める必要が出てきた」と説明する。

 今年2月には、2022年度から新たに掲げる企業パーパス“Sweeten the Future~心がひとつぶ、大きくなる。~”を発表。コーポレートロゴマークもパーパスを記したデザインに変更し、社会的な意義をより強化した。

 パーパスの基本的な考え方に据えたのは、2017年に策定したコーポレートメッセージ『糖から未来をつくる』の英語版である“Sweeten the Future”。

 「これを広義に捉え、消費者目線で掘り下げてより明確にする作業を全社ベースで行った。キャンデー1粒で人々を笑顔にしていくという役割がカンロの存在意義であり、110周年の年にこの企業パーパスを発表できたことは大変嬉しい」と語る。

 このパーパスのもとで作成したのが、中期経営計画2024だ。

 「中計で目指す姿は、人と社会の持続可能な未来に貢献するパーパスドリブン企業になること。2022年からの10年間は、Kanro Vision 2030の実現に向けたNew Chapter(新章)と位置付けており、そのファーストステップとなる中計は、ビジョン実現に向けて新たな事業を起こす3年間となる」

ハードキャンデーには伸びしろがある⁉

 事業は、コア/デジタルコマース/グローバル/フューチャーデザインの4つの領域で拡大。コア事業は、既存ドメインを軸にイノベーションで新規ドメインを開拓し、他の3事業はチャネルを広げ、新たな事業ドメインを構築していく。

 コア事業では、「ハードキャンデーはイノベイティブな商品開発で新たな価値を提供していくのが最優先事項。グミは、主力ブランドの育成に注力するほか、時代のニーズを掴んだ商品を発売する」と、一層の進化を目指す。

 特にハードキャンデーは、Z世代に向けた製品開発に力を注ぐ。

 「Z世代はハードキャンデーを舐めない。口の中にずっとあるのが面倒なのかもしれない。どういうハードキャンデーがいいのかを聞いても、それが分からないから答えは出てこない。それならば、若い人たちが舐めたくなるようなハードキャンデーを我々が提示すればいい」と果敢に攻めていく。

 そのひとつが、PLAZAと共同開発した『EMOTIONAL CANDY』だ。販路はPLAZA店舗とオンラインショップのみと限られているが、好調な滑り出しをみせている。同製品でZ世代に訴えかけてニーズのヒントをつかみ、今後の製品開発に生かしていく考えだ。

 「需要がないのなら、需要を生み出せばいいわけで、そこにハードキャンデーが伸びる余地はまだまだある」と言い切る。

 グミは、『マロッシュ』の大ヒットもあって、同社の売上構成比で4割を超えるところにまで成長。eスポーツプレイヤー向けの『BRAON』は、新たな展開を準備中だ。課題は、生産能力の増強だという。

 「2019年にグミの新しいラインを稼働させて増産体制を整えたが、すでにいっぱいになってきている」と、今後の対応を模索している。

 プラントベース製品の開発にも本格的に着手しており、3月には『植物ミルクのやさしいキャンディ、やさミル』を発売した。

 「プラントベースが目的というよりは、Well-beingを重視していく過程の中で、結果としてプラントベースの商品が出てくる。2017年にCIを変更してから、“素材と機能性を軸とする商品・サービスを開発方針に掲げており、これは決して変わらない。私が研究所に行くと『カンロは商品開発のハードルが高い』とよく言われるが、そういう中で開発を進めている。地球やカラダにやさしいものを求める人たちは、Z世代も含めてこれからもっと出てくるだろう。そこに応えられる商品を作っていきたい」

Z世代に向けて開発した『EMOTIONAL CANDY』

JR東京駅構内にあるヒトツブカンログランスタ東京店

カギはチャネル作りと製品戦略

 デジタルコマースについては、今後ますます重要になってくる事業と位置づけている。コロナ禍により、直営店の『ヒトツブカンロ』が休業せざるを得なくなった時、急遽立ち上げたショップ販売が予想以上に好調だった。

 「今の時代、デジタルツール抜きには何も語れない。はじめはキャンデーのネット販売は立ち行かないと思っていたが、魅力ある商品であれば買っていただけることが分かった。ネットでマーケティングをしていけば、もっと商品を知ってもらえる」と、昨年を“カンロデジタル元年と位置づけ、マーケティングプロジェクトを立ち上げた。1年が経過してメドが立ったことから、今年新たにデジタルコマース事業本部(内山妙子事業本部長)を設置した。

 デジタルコマースを推進する上で重要なのは「やはり商品力。配送料を負担してまで購入したいと思える、魅力ある商品でないといけない」と、ネット専用製品の開発にも力を注ぐ。

 グローバル事業は、体制強化や人材育成を進め、2028年から2030年に売上高比率25%を目指す。そのカギは、チャネル作りと商品戦略が握っている…

(続きは2022年春季特別号11頁へ)

 

 

今年30周年を迎える

『ノンシュガーのど飴』

 

 

 

 

 

20周年の『ピュレグミ』

 

 

 

10周年の『金のミルク』

プロフィール (みす・かずやす)

1957年2月28日生まれ、静岡県出身 1979年3月、一橋大学商学部卒業

1979年4月、三菱商事入社 2016年3月、カンロ代表取締役社長

2019年1月、同社代表取締役社長CEO兼チーフ・コンプライアンス・オフィサー

(現在に至る)