新生三幸製菓のシンボル誕生!

過去最大規模のプロジェクト

『新発田第5工場』を本誌独占取材で初公開

ブランド価値を高める成長戦略の最重要拠点

 年間百億円の製造キャパを持つ生地工場の竣工から約3年。三幸製菓の新発田工場最後のプロジェクトにして、過去最大規模となる新発田第5工場がこのたび完成した。「食と健康の総合カンパニー」をめざす同社にとってこの工場は、新生三幸製菓を率いる佐藤元保CEOの時代を象徴する、最重要拠点である。その全容に迫ってみた。

 

新発田第5工場の概要

敷地面積:2,300坪

主力製品:ぱりんこ、三幸の塩揚げおかき

見学施設:ぱりんぴあ 従業員数:280名


 

 

三幸製菓株式会社

代表取締役CEO 佐藤元保氏


『ぱりんこ』のユートピア

 

 愛らしい『ぱりんこ』の公式キャラクター『ぱるん』『りるん』をはじめ、三幸製菓を代表するおせんべい各種のイラストをあしらった外観は、まるでアミューズメント施設のような親しみやすさを感じさせる。三幸製菓が2021年10月に新設した新発田第5工場(新潟県新発田市、以下第5工場)は、見た目も中身も、同社のこれまでの生産工場とは一線を画す。IoTの導入や省人化など、効率を重視する路線をさらに推し進めながらも、地域にも従業員にも配慮した設計になっている。

 本誌2020年春季特別号のインタビューで代表取締役の佐藤CEOは、「私がめざすのは『人』を大切にする会社。中長期的にものを考えていくこと。風通しが良く誰でも自分の考えを発信できて、正論で歩んでいく会社にすることです」と述べているが、第5工場はまさにその考えを具現化したものといえるだろう。

 三幸製菓は現在新潟県内に3つの工場を持っている。本社近くにある創業時からの新崎工場と、基幹的な役割を担う荒川工場、そして生地工場を含めると5つの工場を擁する新発田工場だ。その中でも第5工場は、佐藤CEOの時代を象徴する新生三幸製菓の重要な拠点と位置づけられそうだ。

 そうした機能の一つとして挙げられるのが、同社初となる工場見学用施設『ぱりんぴあ』の設置である。第5工場内の「味付け工程」と「包装工程」を実際に見学することができるこの試みは、地域貢献と日本の食文化であるおせんべいの良さを、子供たちに伝えることを目的としたものだ。小学校の社会科見学、体験学習に限った運用を想定している。名称は第5工場でおもに生産される『ぱりんこ』のユートピアにしたいという思いが込められている。

 『ぱりんぴあ』にかける思いについて佐藤CEOは「これまでの工場は生産効率を重視した設計のため、見られることをほとんど意識していませんでした。ものづくりに関しては自信がありましたが、これからは多くの小学生の皆さんにおせんべいづくりを見ていただくことで地域に貢献するとともに、弊社のファンにもなっていただきたい。彼らは未来のお客さまであり、未来の従業員かもしれませんから」と述べる。

 また第5工場のあるべき姿については、「これまでは工場で働く従業員に負荷をかけてきてしまった面もあったので、それを一新するべく従業員が快適で、安心して働けるような工夫を凝らしています。ごく当たり前のことしかやっていませんが」と率直に語る。

 たしかに働く人のいないところでは消灯するなど、合理化を徹底してきた従来の工場の様相とは異なり、第5工場内は明るいのが印象的だ。そして何よりも巨大な運行釜や焼き窯といった非常に高温になるような場所でも、不快な暑さを感じないことに驚く。それぞれの機械の配置もすっきりしているのである。

最新の生産設備で製造されるのは、

1975年発売のロングセラー 『ぱりんこ』だ!

40メートルあるオーブン(焼き窯)。最新設備による冷却効果は非常に高い。作業従事者にやさしい設計となっている

オーブンのラインは2本。生産能力の高さがわかる

『ぱりんこ』の1日の生産量は富士山10個分に相当!

調味油がよく浸みこむように、ファンを使って冷却。幅は4尺の特注だ

キャラクター設定も重要なポイント

 2020年の就任以来、佐藤CEOは魅力ある企業へと改革を進めてきた。社名である『三幸』、すなわち「三つの幸せ」の追求である。『ぱりんぴあ』の設置は、その一つである「お客様の幸せ」につながっている。もう一つの「従業員の幸せ」に向けた取り組みについては、第5工場の内容をはじめ、従業員の定着率を考えると、着実にその成果が出始めていると考えられる。

 佐藤CEOが「三つの幸せ」と同時に進めている課題が、ブランド力の強化だ。『雪の宿』『チーズアーモンド』といった製品名は知っていても、それがどこでつくられているのか知らない人や、三幸製菓そのものを知らない人が多いと、佐藤CEOは残念そうに語る。このような現状に対し、「新潟といえば『三幸製菓』という状態にしたい」という。

 そのための施策として、全方位的に好感度の高い元AKB48の指原莉乃をイメージキャラクターとしてTVCMに起用したり、各キャラクターの名前に製品名を冠した青春群像劇仕立てのアニメ『ブレークスルー』をYouTubeで配信するなど、若い世代をターゲットにした情報発信を積極的に展開している。小学生を対象にした第5工場内の施設である『ぱりんぴあ』も、その一環だ。

(続きは菓子食品新聞2022新年特大号34頁へ)

形状選別機を通過後、人の手によって素早くチェックされる。ちなみに人を見かけたのはこのセクションと乾燥工程くらいだった

ピッキングマシンで個装した製品をトレーに入れた後、パッケージされる


従業員がファンになるために =マザー工場としての役割担う=

 年間売上高600億円に迫る三幸製菓。その同社にとって過去最大規模となる新発田第5工場が建設された背景は、いかなるものだろうか。取締役製造本部長の佐藤博久氏、生産統括部長の玉川勝之氏、統括工場長の名澤博行氏に話を聞いた。

 

左から、統括工場長の名澤博行氏、取締役製造本部長の佐藤博久氏、生産統括部長の玉川勝之氏

みなが喜ぶ見学コース

 本誌 2019年に完成した生地工場に続いて、いよいよ第5工場が稼働しました。この新工場についてはさまざまな憶測が飛び交いましたが、何をめざして作られたのか教えてください。

 佐藤 そもそもの背景ですが、12年前に新発田第1工場を建設して以来、米菓の生産工場を建設していませんでした。売上を順調に伸ばさせていただいている中で、当然キャパが足りなくなってきます。われわれとしてもさらに成長していかないといけない、ということで社内で話し合いをおこないました。いろいろなシミュレーションをしてみたところ、『ぱりんこ』はブランド力を強化すればまだまだ伸びるということがわかりました。そこで品質と生産性をさらに伸ばすために新崎工場からこちらに移設することにしました。

 本誌 『ぱりんこ』といえば三幸製菓のうるち米の基幹製品ですね。

 佐藤 はい。1975年に発売し、急成長して現在に至ります。『雪の宿』はその2年後の発売になります。佐藤CEOの思いも強かったのですが、第5工場に『ぱりんこ』を持ってくるにあたって、工場見学コースを併設することにしました。弊社としては初めての試みになります。特にこれからは小学生の皆さんにも見ていただいて、社会貢献を通して『ぱりんこ』そのものを育てるのと同時に、第5工場は三幸製菓の新しい工場体、いわゆるマザー工場にしていきたいという思いがあります。

 本誌 実際に見学施設の運用は始まっているのでしょうか。

 玉川 まずは10月2日にわれわれ社員とそのご家族に向けたお披露目会を実施しました。希望者を募ったところ、700人弱が集まりました。

 本誌 その時の反応はいかがでしたか。

 玉川 ご家族も一緒に見学していただきましたが、みなが喜んでいたという声を非常によく聞いております。お子さんを連れてこられた方たちは、自分が働いている会社、実際の工場の中を見せることができてよかったと。子供たちはお父さんやお母さんの働くところを見ることができて、感激したようです。それを聞いてさらにモチベーションが上がるといった、相乗効果も確認しております。

 本誌 三つの幸せの中の「お客様の幸せ」を目的とした見学施設が「従業員の幸せ」にもつながっているのですね。

 佐藤 小学生の皆さんに見ていただくことで『ぱりんこ』や三幸製菓のファンになっていただきたいという思いもありましたが、見られることによって緊張感をもって働けるようになったそうです。それがひいては『ぱりんこ』を作る誇りとなって、社会にお届けしたいというモチベーションが上がっていると感じています。

(続きは菓子食品新聞2022新年特大号40頁へ)

三幸製菓初の見学施設 『ぱりんぴあ』

第5工場でおもに生産される『ぱりんこ』。売上をさらに伸ばすために、新崎工場から移設し、ブランド力を強化する


全行程80分程度を想定した見学ツアーでは、実際の「味付け工程」「包装工程」を見学できる。ナビゲーターは三幸製菓の従業員が務める。そのほか、見学者には、自身で選んだ好みの製品をオリジナルの詰め合わせにしてプレゼントしている