『小枝』から“大樹”へ 時代を映しだすチョコレート 森永製菓

 直近のチョコレート市場はサクサクした食感のスナックチョコレートが好調だ。そうしたトレンドの波に乗ってここ数年伸長が続いている森永製菓の『小枝』が、今年50周年を迎えた。それを機に半世紀ぶりの原点回帰ともいえるサステナビリティをテーマにした施策をはじめ、社内外でコラボを推進。その展開が奏功し、あらゆる世代から注目されている。

『小枝』の新キャラクターにタレントの道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)を起用しキャンペーンを展開中

 

1971年 登場時のパッケージ

2021年 パッケージ

ヒットに繋がったネーミング

 

 サクッとした心地よい歯応えと、アーモンドの香ばしさがほどよくバランスした『小枝』は、その食感もさることながら形状も独特である。逆に独特な形状だからこそ、食感も特徴的だといえるのだが、細長いスティックタイプのチョコレートには、アーモンドをはじめとする具材がたっぷり入っている。それらが他に類のない同製品の魅力になっているが、そもそも『小枝』はどのような背景の下、開発されたのだろうか。

 そのあたりについて森永製菓の菓子マーケティング本部で『小枝』ブランドを担当する信田直毅さんは、「当時の研究員が海外視察に行った際に、海外で流行っているお菓子を持ち帰ってきました。その中の一つを日本人の口に合うように具材を変えてアイディアとして出したのがきっかけだったと聞いています。その元となったお菓子は『小枝』とは具材もそのバランスも全く別物だったようです」と話す。

 信田さんによると、製品化は決まったものの、それを具現化するのは容易なことではなかったようだ。当時は具材をたくさん入れて細く長く成型することが技術的に難しく、手持ちの機械を自分たちの手で改良するなどして、少しずつ量産が可能になったという。過去の資料には、発売当初はほとんど手作業に近かったという記録も残っているそうだ。

 そうした繊細な作りがロングセラーの要因の一つになっていると考えられるが、それと同時に、現在ではすっかりなじんでいる『小枝』という名前の由来になっていることにも注目したい。

 『小枝』が発売されたのは1971年。当時のチョコレートの製品名はカタカナが主流だったこともあり、漢字名を使うことに社内では反対意見もあったようだ。しかし前述のような製法の難しさ、それによる繊細な形状から、『小枝』という名前がすんなりハマったのではないかと信田さんはいう。

 信田さんは、結果的にこのネーミングがヒットに繋がったのではないかと考えている。『小枝』がヒットした後、『森のどんぐり』『栗』『苺』など和名を使ったお菓子の発売が続いたからだ。さらにいえば、『小枝』という名前にしたからこそ、お菓子としては異例のプロモーション展開ができたといえるだろう。

 『小枝』が発売された当時の日本は急速に工業化が進み、環境汚染が深刻化した高度成長期に当たる。そのタイミングで自然を大切にしようという機運が芽生える中、テレビCMで「高原の小枝を大切に」というメッセージを打ち出した。それまでにない新しいタイプのチョコレート菓子、という意味でのインパクトも大きかったが、環境に配慮したメッセージも世間の耳目を集めて話題を呼んだ…

(続きは5519号26頁へ)

森永製菓マーケティング本部 信田直毅氏

 2008年入社。入社後、研究所で開発の仕事に従事。そこで『小枝』の開発にも携わる。現在の部署には2020年4月に配属。『小枝』ブランドを中心に担当する