東北人のソウルフード アキヤマ『メン子ちゃんミニゼリー』  

苦難を乗り越え ブランド復活!

 東北にアキヤマあり! 宮城県大崎市に隣接する加美郡加美町に本社をおくアキヤマは東北人なら誰もが知っている『メン子ちゃんミニゼリー』を製造販売するお菓子メーカーだ。カラフルなひと口サイズのゼリーを頬張れば、誰もが懐かしい子ども時代を思い出すに違いない。こんな美味しいゼリーをひたすら一所懸命に作り続け、いまや「東北人のソウルフード」とまで言わしめるアキヤマだが、今年で発売40年を迎えるに至るまでの道のりは、決して平たんなものではなかった。倒産の危機を乗り越え、その悔しさをバネに、起死回生へ向けた強い思い。アキヤマの奮闘ストーリーをお届けする。

世代を超えて東北の人々に長年愛され続けてきた「メン子ちゃん」ブランド。旧・秋山食品の経営破綻により、その灯はいったん消えかかったが、足利社長を筆頭に、「絶対に復活させる」との強い思いと志を同じくするかつての従業員たちが集まって2008年に誕生したのが新生アキヤマだ。彼らの絆は強い。

誇りを取り戻せと集まった同志たち

 

 ゼリーとは元々「煮こごり」の意味。砂糖液や果汁などをゼラチンやペクチン、寒天などの凝固剤を使って固めたお菓子だ。数あるカテゴリーの中でも、そのリーズナブルさから「駄菓子感」も強いが、その身近さゆえに、誰もが子ども時代に味わった懐かしい味ともいえる。特にチューブの場合、夏の暑い季節になれば凍らして「チューチュー」と吸いながら美味しく食べる独特の醍醐味もある。

 しかし昨今は清涼飲料やアイスクリームなど他の冷菓に押されて、ゼリー菓子そのものの存在感がやや薄れ気味だ。市場でも安易に「百均商材」へと見做されたり、夏場でしか売れない季節商品だとして、秋の棚替え期になるとすぐに追いやられたりと…。そのような本来の価値に見合わない不当な扱いを受けているようにも映る。

 アキヤマはこの『メン子ちゃんミニゼリー』を初めとするゼリーシリーズと清涼飲料、スナック菓子が事業の3本柱。看板はあくまでゼリーだ。ポーションタイプの『メン子ちゃんミニゼリー』は今年で発売開始から40年の節目を迎えたが、現在の新会社、アキヤマ自体の創業は2008年だ。その理由はなぜか。それは経営破綻した「秋山食品」の事業を新会社を立ち上げた社員有志が引き継いだからだ。

 地域に根差して「ゼリー」という大切なお菓子の灯を燈し続ける同社だが、今日の復活に至るまでの道筋は、それこそまさに山あり谷ありの連続だった。新生アキヤマを牽引する足利芳則社長(写真)がその歩みを振り返りつつ未来への希望を語る。

 

愛着あるゼリーを途絶えさせない!

 

 お蔭さまで『メン子ちゃんミニゼリー』は、発売開始から40周年という大きな節目を迎えることができました。これもひとえに多くのお客さまのご支持があればこそです。そして新生アキヤマが曲がりなりにも復活し、いまこうして再びお菓子づくりができていることをとても嬉しく思っています。

 前の会社が経営破綻してしまい、私も含めて当時100名ほどいた従業員すべてが解雇されました。そこで思ったのは、長年にわたり愛され続けてきた『メン子ちゃんミニゼリー』などの商品を「このまま途絶えさせてたまるか」という思いでした。その悔しさが会社復活の原動力となったのです。そうした強い思いと志を抱えた元の従業員たちが集まり、設立したのがいまのアキヤマなのです。

 その後、いくつかの紆余曲折を経て何とか製造できる状態へとたどり着いたのですが、再開当初は苦労の連続でした。工場の再稼働では当初わずか10数名で『メン子ちゃんミニゼリー』を作り始めました。幸いにも出荷ができるようになり「さあ希望が見えてきたぞ」と思ったのも束の間、販売店からの理解と協力がなかなか得られず、とても閉口しました。本来なら『メン子ちゃんミニゼリー』が置かれるはずの棚に別の商品が陳列される有り様だったからです。

 それでも「応援してるぞ」と励ましてくださる方がいました。その声を希望として、いまの佐藤和浩営業本部長たちと苦労を重ねながらも、新たな販路を切り拓いていったのです…

(続きは2121年春季特別号へ)

これが東北人なら誰もが知っている『メン子ちゃんミニゼリー』。東北地方の方言、

可愛いを意味する「めんこい」がネーミングの由来だ。

アキヤマ復活劇もう一人の主役

佐藤和浩 氏にきく(取締役営業本部長)

 

 新生アキヤマ復活劇。そのストーリーは、佐藤和浩営業本部長の存在とその活躍なくしては語れない。復活へ向けた佐藤氏流の哲学とは何だったのか。またその奮闘努力の道筋はどのようなものだったのか。思いの丈を語ってもらった。

 

貫き通した適正価格主義 『メン子ちゃんミニゼリー』は東北から全国へ

 

本物の価値に見合う適正価格を絶対死守

 

 私も社長と同様、愛着ある『メン子ちゃんミニゼリー』を軸に、しっかりとした経営で会社を立て直したいという思いが強くありました。しかし過去の過ちだけは繰り返したくない。それは前の会社の「負の教訓」からの学びです。大切なのは商品価値に見合う適正な価格を守り利益を確保していくこと。旧・秋山食品はその点を疎かにしてきました。破綻した要因は高付加価値化へのシフトと低価格路線の脱却という目論見がマーケット(ライバル不追随とも相まって)に受け入れられなかったことです。

 少々脱線しますが、秋山食品時代、当社は率先して「ゼリーなどの適正価格を求めていこう」と業界全体に呼びかけたことがありました。適正価格を貫こうという当時の気概が「勇み足」を招いたのかも知れません。最終的には全体の賛同は得られず、結果的にそのことが会社の破綻につながってしまうわけです。

 当時の胸中を振り返ると正直、ウチだけが馬鹿をみたと悔しさでいっぱい、恨み節ばかりが募って辛かったです。しかし苦しい時であっても同じ姿勢を貫き続け、いまに至るのです。今後も安売りや値引き合戦のような「不毛な競争」にだけは絶対に巻き込まれたくありません。特にゼリーについてはいまも強くそう考えます。

 会社を立て直していく最中にあっても、小売店や卸の側が私たちの求める価格より安価な価格を提示してきたら「取引を断る」覚悟で臨んでいました。相手からは隋分と強気だなと思われたことでしょうね。たしかに価格を下げて安売りをすれば、一時は販路が拡大して「儲かったような」気分になる。しかし、そうしてしまうと利益は縮みます。長期的にはメーカーの体力を蝕み、結局は自分の首を締める羽目に陥るだけです。

 適正価格を死守することは正直苦しいです。しかし、毅然とした姿勢を取り続けた結果、徐々に理解と協力が得られるようになってきたのです。そして「アキヤマのゼリーは少々高いけど、品質と美味しさに見合った適正な価格だ」という認識が定着していきました。加えて『メン子ちゃんミニゼリー』そのもののブランド価値を高めることにもつながりました。

 価格だけではありません。当時の商品の価値を高める努力もしました。とりわけゼリーは低価格でも安心して食べられる貴重なアイテム。その魅力を残しながら、例えば当時としては珍しい果汁100%のゼリーを登場させたり、人工甘味料でなく本物の砂糖を使ったりと新たな価値を与えたゼリーを送り出しました。

 

破綻を乗り越えて広がる笑顔の輪!

 

 適正価格にすることで利益が確保できる。何が良いかというと、利益を設備の更新などの未来の投資に回せるからです。それによって商品の品質はもちろん、価値をも高めることができる。当社もこのほどわずかに生まれた利益で、老朽化した機械の修理改造にあてることができました。そうした新しい価値創造につながる取り組みの積み重ねが、最終的に業界全体に「Win-Win」の関係をもたらすと、改めて強く思います。

 2008年に新生アキヤマが誕生してから13年が経ちました。お蔭さまで、いまでは『メン子ちゃんミニゼリー』をはじめとする当社商品のブランド価値は以前よりも高くなっていると自負しています。特にコロナ禍のいま、食品やお菓子に対する安心安全への目線はより一層厳しくなっています。だからこそ商品価値に相応しい適正価格であることが大事なのです。いわゆる「安かろう的な商品」では消費者からの信頼は得られない。つまり「アキヤマのゼリーは高いけど安心して食べられる」と信頼されることが肝心なわけです…

(続きは2121年春季特別号へ)