江戸前の老舗に妥協なし!
おかき一筋の王様製菓(都内台東区、木村秀雄社長)は、大正 13 年(1924年)の創業。以来97年間、「お客様にきれいで美味しい商品を」をモットーに、手間と味に妥協することなく、 多品種少量生産を続けてきた。徹底的に“質”を追及するその強固な姿勢は、決してぶれない。
少量多品種のモノづくりは、消費者のニーズに寄り添うためである。「どのような条件でも味と手間には一切の妥協をしない、というこだわりを第一に、挑戦と革新を繰り返している」と木村秀雄社長(写真右)は胸を張る。江戸前の老舗の誇りである。
食べた時に感じる純粋な“美味しさ”を何よりも大切にしている。「丁寧なものづくりを第一に、原料選びから製法、包装、すべての工程において妥協せず、ニーズの変化に即した商品を開発・製造することに日々努力している」(木村社長)。
販路は、本社にある王様堂本店(写真下)をはじめ、駅や空港での土産商品からGMS、高級スーパー、百貨店、航空機業界、家庭用PB、業務用PB、輸出品と多岐に渡る。あらゆるニーズにきめ細かく対応しているからこそできることだ。
それだけではない。時代に合わせた変革にも果敢に取り組んでいる。
「消費者の食に対する感度がここ10年で急激に高まってきた。近年では健康に対する意識も、メーカーが考えている以上に敏感となっている。単に美味しいだけでなく、暮らしに寄り添ったものでなければならない時代になった」と、木村社長はニーズの変化に鋭敏だ。
こうした背景を捉え、同社では2013年から製造における2大改革に取り組んでいる。その改革とは、①「真にお客様が安心して召し上がることが出来る心地よい商品の開発」②「食品製造工場として生ものや乳製品にも劣らない製造現場管理体制の構築」だ。 ①については、「お子様の食を気にされるお母さまの声をうかがう中で始まった取組み。低カロリー、低塩分、着色料不 使用など、健康に対する捉え方は様々だが、まずは“化学調味料を使用せずとも美味しい商品を作ることが出来るのではないか”という視点」(木村社長)から取り組んだ。
2017年春から夏にかけて、上質な素材はそのままに、天然素材のだしを活かした味づくりを一からやり直した。その結果、化学調味料不使用の製品を、今では常時40種以上も揃えている。『昔かきもち海日 和山日和』『浅草七餅』『東京あられ』『鬼揚げ』『むらさき揚げ』『手延し柿ピー』などだ。
②では、2016年11月に米菓製造業としては初めて、東京都食品衛生自主管理制度(東京都HACCP)でマイスター資格を取得。木村社長は、「米菓業界ではまだ浸透していない考え方だが、確実に安全で安心な商品を提供できる体制づくりを継続している」と話す。
この他にも、国産米菓でHALAL認証を取得した製品の開発や、「ヴィーガン」水準の認証を得た製品の開発にも取り組み、グルテンフリーに対応した製品も作るなど、時代を先取るパイオニアとしても知られる。
だが、そのどれもが簡単にできるものではない。生産設備や原料の作られ方まで、日本で普通に作られているものを使っていてはHALAL に対応するのが難しく、原材料の厳格な選定、生産ラインの厳格な分離管理が求められる。グルテンフリーを実現するには、米菓とは切っても切れない関係にある醤油の多くが、大豆とともに小麦も原料として使われているものが多いため、一歩踏み込んだ対応が必要となる。それでもひるまず、あらゆる人に美味しいおかきを食べてもらいたいという強い想いと、そのためには手間ひまを一切惜しまないという真摯な取組みで、常に前進してきたのである。
(次号後編へ続く)