リアル展示で“包装”の未来を拓く
公益社団法人日本包装技術協会(以下JPI、都内中央区、矢嶋進会長=王子ホールディングス会長)は2月24日~26日の3日間、世界有数の総合包装展「TOKYO PACK 2021(2021東京国際包装展)」を東京ビッグサイト(都内江東区)西1~4ホール、南1~2ホールで開催した。今回のテーマは「未来(あす)を拓く 包みのテクノロジー」。見どころとしては「エコフレンドリーな包みのテクノロジー」、「安全かつロングライフを実現する包みのテクノロジー」、「生産性向上を実現する最新テクノロジーとの融合」の3つ。再度発令された緊急事態宣言の最中であり、出展社数は267社・1353小間。会期中の入場者は7万3698人(来場登録1万9836人)となった。
従来とは異なり、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大の中、徹底した感染防止対策を取った上で昨年11月30日に開催発表が行われた同展。開会式およびレセプションは感染防止の観点から中止となった。
年が明け1月8日に緊急事態宣言が発令されたものの、すでに厳格な対策を講じており、自治体や東京ビッグサイト等から中止の要請はなく、無事に閉幕することができた。緊急事態宣言発令中にリアルな展示会ができたこと自体、大きな意義がある、とJPIは語る。
展示分類は、包装資材・容器/包装機械/印刷・包材加工機械/検査・計量・包装関連機材/包装デザイン&コミュニケーションサービス/次世代テクノロジー、包装・物流ソリューションと多岐にわたる内容で、各種のイベントや様々なセミナーも実施。
優れた“包装”を一堂に展示
JPI主催、公益社団法人日本パッケージデザイン協会(以下JPDA)主催による3種類のコンテストに、それぞれコーナーを設け入賞作を展示。
【2020グッドパッケージング展】(写真1)JPI主催「2020日本パッケージングコンテスト」の入賞作品を一般公開。技術・デザイン・環境・アイデア・適正包装面等、広範囲に及ぶ厳正な審査で決定した日本パッケージ技術の最高水準が一堂に集まった。お菓子関連の受賞作品は次の通り。
〈JAPAN STAR〉
▽公益社団法人日本包装技術協会会長賞=『キットカット ミニ』ネスレ日本、凸版印刷。
〈包装技術賞〉
▽適正包装賞=『ザバス ホエイプロテイン 100 294g』明治▽包装アイデア賞=『PINO チョコアソート/ショートケーキアソート』森永乳業、凸版印刷/『大粒ラムネ ディスペンサー型ハンガー什器』森永製菓、凸版印刷、iDクリエイティブ、タカラニコー。
▽パッケージデザイン賞=『板チョコアイス 進撃の巨人 背表紙パッケージ』森永製菓、オリコム、レッドルースター/『おかしなおせち 「三段重」』UHA味覚糖、笹徳印刷。
▽アクセシブルデザイン包装賞=『OS-1500mlペットボトル』大塚製薬工場、大日本印刷▽ロジスティクス賞=『「キシリクリスタル」簡単陳列!販促輸送兼用箱』春日井製菓、春日井製菓販売、レンゴー。
〈包装部門賞〉
▽食品包装部門賞=『微細孔加工フィルム アイテルノ』精工/『「ブレンディ」スティック カフェオレ エコスタイル 紙素材適用個装フィルム』味の素AGF、大日本印刷。
▽菓子包装部門賞=『ジャイアントカプリコ ウキウキオープン』江崎グリコ、大日本印刷/『AGF OF DINOSAURS恐竜ダイカットボックス』松風屋、笹徳印刷/『ブランチュール、ブランチュール ファミリーサイズ』ブルボン、ミカサ/『THE CHOCOLATE おめかしスリーブ』明治、凸版印刷/『ベジフルチップス』吉村。
▽飲料包装部門賞=『い・ろ・は・す 天然水 リサイクルペットボトル 100%』日本コカ・コーラ/『ミニッツメイド Qoo デザインボトル』コカ・コーラ東京研究開発センター/『ネスカフェエクセラ 折りたたみマグ』ネスレ日本、凸版印刷。
▽贈答品包装部門賞=『ブランドイメージにマッチ!高級ギフトにぴったりなヒンジ型パッケージ』パティスリー銀座千疋屋、クラウン・パッケージ。
▽POP・店頭販売包装部門賞『ハイヒール化粧箱(個売りチョコパイ)』ロッテ。
▽輸送包装部門賞=『ブレンディボトルコーヒー用2方式簡易開封段ボール』味の素AGF、レンゴー/『明治 たけのこの里パウチ 外箱』明治、シグマ紙業。
【2020木下賞受賞作品展】JPI主催「第44回木下賞」の受賞作品を展示。お菓子関連では、包装技術賞として「ネスレ日本『キットカット』外装の紙パッケージ化」(ネスレ日本、凸版印刷)。
【日本パッケージデザイン大賞2021受賞作品展】公益社団法人日本パッケージデザイン協会主催「日本パッケージデザイン大賞2021」 入賞作品を展示。お菓子関連の受賞は次の通り。
▽金賞=『Pocky THE GIFT』江崎グリコ、電通▽銀賞=『ネスレ キットカット ミニ』ネスレ日本、ブラビス・インターナショナル/『ポッキープルミエールクラス』江崎グリコ、永島学デザイン室▽銅賞=『下剋上鮎』玉井屋本舗、スパイス。
写真1
写真2
先を見据えるイベント・セミナー
他のイベントとして、【未来を拓く包みのテクノロジー】(写真2)は、「包装の未来のテーマパーク化」をコンセプトに、SDGsの17の目標と包装の役割を関連付けた特設展示。日本パッケージングコンテスト応募作品の中から特に環境に優れた事例や、EU加盟国などの包装に関する規制や宣言、食の安全・安心やロングライフに関するテーマ、AIやIoT、画像認識技術について等、パネルを用いて解説。
【クロマパビリオン】(写真3)は、2019年に設立された「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」における内容と活動を紹介。地球規模の課題である海洋プラスチックごみ問題の解決に向け、幅広い企業や団体が連携し、取り組みの現在と未来を提示した。
【パッケージデザインパビリオン】(写真4)は、「デザイナーと企業との出会いの場」をテーマに、付加価値のある新しいパッケージデザインの発見、販売力向上のためのヒントを紹介。
各種セミナーは、「未来を拓くTOKYO PACKセミナー」「TOKYO PACKグローバルセミナー」をはじめ6つのテーマを元に、全59セッションと多種多様な内容になった。
パッケージデザイン開発とマーケティングリサーチを手がけるプラグの小川亮社長は、「AIが変えるパッケージデザインの評価と作り方」と題し、590万人のデータから学習したAIが、わずか10秒でパッケージデザインを評価する自社システムの最新バージョン4・2についてプレゼンテーションした。同社は、パッケージデザインパビリオンと企業ブースにも出展し、AIシステムに注力している。
精工(府内大阪市、林正規社長)は、「エコな袋 紙プラス」と題し、石化製品であるポリオレフィンフィルムと紙製品を組み合わせ、CO2排出量の削減ができるエコな軟包材を紹介。容器包装リサイクル法で紙として分類されるだけでなく、袋の中身が見える利便性もあり、幅広い用途に使える。
写真3
写真4
画期的な乾燥剤を出展
昭和14年創業のカジワラ(写真5、都内台東区、梶原秀浩社長)は餡子製造設備のパイオニアで加熱撹拌機のトップメーカー。和洋菓子はもちろん、食品分野全般で幅広く導入されている。特にカレールーの製造では国内で断トツのシェアを誇る。会場では主力の加圧式全自動豆煮釜KABP、無人化粒餡ユニットCAT、卓上攪拌機KRミニなど実演を交えながら自慢の技術をアピール。来場者の関心を集めていた。
出光ユニテック(都内港区、松島和正社長)は出光興産グループ企業。食品包材用シートやフィルム、ジッパーテープ、容器など幅広い製品群とその加工技術をもつ。注目は『ポケットジップ付ロールフィルム』だ。袋の開封後も上部が残るので、袋のデザインの幅が広がる。既設のピロー包装機械でジッパー包装が可能になることからコスト的にも魅力だ。現在、数多くのお菓子メーカーが同技術(特許出願中)を採用している。
給袋自動充填包装機のリーディングカンパニーである東洋自動機(都内港区、北村明義社長)は、1968年に世界初のレトルト食品用充填包装機の開発に成功。いまや豊かな食生活に欠かせないレトルト食品。その代名詞ともいえる大塚食品の『ボンカレー』の歴史はここから始まる。同社は現在シリアルやふりかけなどの粉粒体やスナック菓子で使うチャック袋を製造する包装機械の高度化に注力しており、同分野でのシェアを伸ばしている。カルビー『フルーツグラノーラ』や湖池屋『プライドボテト』(写真6)、丸美屋『のりたま』など、おなじみの商品をブースいっぱいに展示していた。
煎餅やスナック菓子にとって湿気は最大の敵。日本化工機材(神奈川県相模原市、大澤浩一郎社長)は、乾燥剤の代名詞『シリカゲル』のトップメーカー。いまや乾燥剤に止まらず紙製品や包装資材など多岐にわたる。ブースでは同社が取り扱う「地球に優しい製品」を幅広く展示。特に、海洋プラスチックごみ問題に注目して開発した包材にプラスチックフィルムや、繊維を用いない画期的な乾燥剤をイチ押しで展示していた。
写真5
写真6