菓子卸「大復活」の時代へ
全国菓子卸商業組合連合会理事長 二木正人 氏(株式会社二木社長)
流通経路において、生産者(メーカー)と小売業者の橋渡しをするのが卸売業者(問屋)の基本機能だ。その中で日本の菓子卸売業者は「需要を創造しプロデュースする力」によって独自の発展を遂げてきた。だが流通経路の短縮化が進んだ現在、菓子卸売業そのものの存在意義が問われている。弊紙は日本の菓子卸売業の脆弱化は「イコール日本のお菓子産業全体の危機」との認識にもとづいて今後、菓子卸売業の団体や企業トップに直撃インタビューを試み、その声を集中連載の形でお届けする。第1回目は全国菓子卸商業組合連合会理事長の二木正人氏。
ニューノーマル対応が鍵を握る
本紙 昨年はコロナに始まりコロナで終わった年となりました。
二木 業界全体が振り回された。新型コロナによって、日本経済はかつてないほど大きな危機に直面した。感染の拡大で人の動きが制限されたことで、人・モノ・カネの動きが滞ってしまった。特に小売業はその立地や地域差、業種業態の違いで経済的なダメージがより膨らんだ。対面接客型のビジネスは散々な結果だ。政府の「GoToトラベル」キャンペーンもあったが、その経済効果もはっきりしないまま、2度目の緊急事態宣言が出た。
また、東京五輪・パラリンピックの2020年開催は延期され、期待された関連事業も消滅してしまった。しかもコロナで厳しい入国規制が敷かれ、インバウンド消費もほぼ「ゼロ」に化した。4月から6月にかけての国内経済は実質GDPで年率28.1%減。これは戦後最大の落ち込みと言われた石油ショックやリーマンショックの時よりもひどい。
とにかく経済活性化の鍵を握る人口移動激減の影響は大きく、観光業や宿泊業、交通機関などは壊滅的な状況だ。東京・上野アメ横に本店のある「二木の菓子」では前半は巣ごもり重要もあり、とりわけ郊外店の業績が良かったものの、観光地立地の上野販売部の3店舗は著しい影響で売上を落とした。
特に日本は四季折々の豊かな自然と季節の変化があるからこそ、日本の消費は活性化する。人も動くから経済が回る。いまはまったく逆だ。最大の不安はコロナウイルス終息の先が読めないこと。その意味でワクチンには大いに期待しているし、一つの光明といえる。とにかく、人の交流による消費マインドの活性化に期待し、まだ時間が掛かるがインバウンドの復活を望みたい。
――一般論として今年の消費トレンドなどをどう予想しますか。
二木 昨年のヒット商品や傾向などを振り返ると、例えば「鬼滅の刃」や「あつまれどうぶつの森」「檸檬堂」「ウーバーイーツ」「出前館」「マスク消費」「Zoom」などの3密やステイホームといった外出自粛規制下における巣ごもり需要の圧倒的な高まりの中から、コロナウイルス関連商品に人気が集まった。
それを踏まえて予想すると、今年は「アフターコロナ」としての新しいライフスタイルの変化に合わせて商品の開発や消費者の買い方、小売りの売り方が変わってくるのではないか。すでにコロナ禍で消費者の買うものと買物習慣に変化が表れている。キーワードとしてあるのは「健康・美味しさ・安心安全・癒し・清潔・新鮮」で、そうしたテーマを掲げて開発された商品が売れる。結局どの時代にあってもライフスタイルの変化に対応した商品開発が大切だ。
このように急激な変化に対応するためには、いつでも素早い判断で経営方針を変えられるように会社の体質を強靭化させつつ、しなやかに対応できるように身軽にしておくことが肝心だ。
昔からそうだが、お菓子業界というのは、メーカーも卸も小売も中小零細企業が圧倒的に多く、経営基盤も含めた企業体力や体質が弱い。資本力に恵まれた大手メーカーであれば体力もあって、人材も集まる。それに対して大手卸企業を除いた中小卸は体力的に厳しさがある。
しかし、卸も淘汰されながら、やがて大手資本に吸収されていくのは時代の必然であると思われる。いま全国に250社の菓子卸会社が存在するが、言い方を変えると、それらの卸会社は厳しい時代の荒波を乗り越えて「生き残っている」ところばかりだといえる。経営や商売の仕方に個性があり、常にアイデアを発揮している。
――厳しい時代において「売れる」ポイントはどこにありますか。
二木 人の移動が少ないコロナ禍であっても、人を惹きつける魅力は何か。それは「話題性」だろう。例えばパブリシティなどによってテレビ番組で取り上げられたものはたいてい大きな話題となる場合が多い。特に日本人は真面目だから、影響力の強いブームにすぐに乗っかる特徴がある。つまり話題性のある情報を発信することと、その情報を「速く多く集められる仕組み」を作る。これが命運を分けると思う…
(続きは5491号1面へ)