“アフターコロナ”を語る 全国和菓子協会専務理事 藪光生 氏

和菓子の明日 前編(全2回)

和菓子は常に不易流行だ!

日本人の心のDNAに刻まれた伝統とその未来

 和菓子には日本人の心のDNAに刻まれた美味しさの原点がそこにある。今年は「新型コロナ」という疫病神にとり憑かれた厄介な年となり、妖怪「アマビエ」を模った和菓子もブームとして起きた。常日頃「和菓子の歴史はまさに不易流行の連続だ。どの時代においてもその魅力が失せることはない」と語る全国和菓子協会の藪光生専務理事(写真)に「和菓子の明日」を展望してもらった(全2回)。

 和菓子の日に潜む深い文化的な意味

 ――毎年6月16日は「和菓子の日」です。文化的な側面からもとても大切な意味があります。

 藪 「和菓子の日」の由来は、嘉祥元年(西暦848年)のこの年、疫病が蔓延したことから、仁明天皇が御神託にもとづき、6月16日に菓子や餅などを神前に供え、疫病の退散と健康招福を祈願し、元号を「嘉祥」と改元したとの古例に由来します。嘉祥とは文字通り「めでたいしるし」と言う意味です。

 この行事が室町時代、江戸時代と歴史の中で大切な行事として受け継がれてきました。この伝統ある「嘉祥の日」を現代へと蘇らせたのが、現在の「和菓子の日」です。お客様にもっと和菓子に親しんでもらいたいとの願いに加えて、和菓子に携わるすべての人が、その魅力や意義を再確認していこうとの想いも込められているのです。

 昭和54年6月16日が記念すべき第1回目で、かれこれ40年以上続けられていますが、お陰さまで徐々に多くの方々に知られるようになり定着してきました。バレンタインデー(VD)のように単純明快なコンセプトではないものの、文化的な意味での広がりを嬉しく思っています。

 ――今年はコロナ禍で「和菓子の日」をめぐる各種のイベントも中止を余儀なくされています。

 藪 コロナ禍が深刻化する前の2月あたりまでは、小中学校を対象とした「和菓子の出張授業」や「創作和菓子講習会」など人気の恒例イベントは実施してきました。しかし緊急事態宣言が発令された4月7日以降、協会としては「和菓子の日」にちなむ行事、特に人間が大勢集まる行事はすべて中止にしました。

 毎年秋恒例の明治神宮で執り行う「銘菓奉献式」も今年は取り止めとなりましたが、とても人気が高い「手作り和菓子教室」は開催して欲しいとの要望が根強いので、時期は未定ですが、延期して開催することにしています…

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次号=(後編)魅力ある和菓子業界へ