虎屋文庫は、3月に機関誌『和菓子』27号(写真)を発行した。
機関誌「和菓子」は、和菓子に関連する論文や史料翻刻を中心とした学術雑誌で、1年に1回発行。毎号「菓子とまじない、占い」「羊羹」「地域資料に見る菓子」など、特集を設けている。
今年の巻頭言は、筒井紘一・茶道資料館顧問による「茶の菓子考‐王朝文学をテーマにして‐」。
特集は「近世菓子見本帳」。菓子見本帳は、上菓子の絵図と銘などが記された帳面。多くは菓子屋が顧客に見せるカタログとして作成したもので、今回は主に江戸時代のものに焦点をあてた。
カラー口絵では、海を渡ってボストン美術館に収蔵されている「菓子雛形極彩色数品」を全頁カラーで掲載。菓子全282点が意匠や菓銘の簡易な解説付きで紹介されている。
さらに、和歌山市立博物館所蔵の「紀州徳川家御用菓子商・駿河屋伝来の絵手本」の紹介、元禄8年(1695年)を最古とする虎屋の近世の見本帳17冊についての考察、菓子全381点が載った虎屋文庫の「蒸餅干菓子雛形」、WEB公開の有無も含めた全国各地の見本帳情報「菓子見本帳所蔵機関一覧」を掲載。
「和菓子研究」では、東海地域の菓子文化を農業、水産業、醸造業、観光業など産業に絡めて考察した「東海地域の産業から見た菓子文化の歴史民俗学的考察」(遠山佳治・名古屋女子大学短期大学部教授)を紹介。
「虎屋の御用記録の翻刻」では、前号に引続き元禄13年(1170年)「諸方御用留帳」(虎屋黒川家文書)の翻刻を掲載している。
B5版/138頁/税込1000円。通信販売のみで、注文はFAXかメールで受付けている。申込み・問合せは虎屋 虎屋文庫まで。