トップはかく語りき ライオン菓子株式会社 代表取締役社長 西 勝 氏

【前編】

 「健康と天然のおいしさ」を理念に掲げ、今年創業115年を迎えるライオン菓子。『ライオネスコーヒーキャンディー』『きえちゃうキャンディー』などのロングセラーを持ち、100年を超える老舗企業として躍進を続けている。西勝代表取締役社長は、今年就任3年目。そこで、これまでの回顧と総括、次なる創業120年を見据えた抱負などを聞いた。

老舗の看板を守り続ける

 2017年1月に社長に就任して以来、「あっという間の3年だった」と振り返る西社長は、自身を「力及ばず、目に見えるような成果が出ていない」と厳しく採点している。

 「売上が伸長した年もあれば、落としてしまった年もある。それでも、売るべき商品はしっかり売っていこうと、柱である商品の売上強化を図っているが、実績にはなかなか結びつかない」

 ただ、コストの見直しなどは、前任の大井誠一社長の時代から継続している。

 「原材料や包材で無駄をなくしたり、配合を見直した商品もある。廃棄の削減にも取り組んでいる」

 同社の柱となる製品は、『ライオネスコーヒーキャンディー』『きえちゃうキャンディー』などのロングセラー製品、『そのまんまレモン』『そのまんまゆず』などの素材菓子、そして、『にっぽんの果実のど飴シリーズ』をはじめとするのど飴だ。

 ライオン菓子は、明治38年(1905年)に創業した篠崎商店(水飴の瓶詰卸商)に始まる。昭和22年(1947年)に、組織を株式会社に改めて篠崎製菓を設立、平成7年(1995年)に社名を現在のライオン菓子に変更した。

 製品では、昭和10年(1935年)に日本で初めて『ライオンバターボール』の生産を開始、戦前で入手しづらかったバターをふんだんに使った味わいで愛された。

 『ライオネスコーヒーキャンディー』は、前回の東京オリンピックが開催された昭和39年(1964年)に誕生。当時は贅沢品だったコーヒーをキャンデーに取り入れて大ヒット、その濃厚な味わいは誰もが知るところ。50年以上経った現在も、柱であることに変わりはない。

 『きえちゃうキャンディー』は、平成3年(1991年)に生まれた人形型のファンシーキャンデー。なめると味と色が変わる楽しさと、マスコットキャラクターの「きえちゃう君」の親しみやすさから、親子を中心に人気がある。

 創業当時から飴を作り続け、流通菓子業界におけるキャンデーの老舗企業を率いる責任について、西社長は「しっかりとキャンデーを売り、歴史ある会社をきちんと存続させていくこと」と力強く語る。

 そして、次の節目となる120年に向けても、「継続して利益が出せる体制を整える。どういう状況であっても利益を出さないことには、会社は存続できない」と気を引き締める。

 ただ、世界中で蔓延している新型コロナウイルスなどのように、自社の努力だけでは解決できない外的要因もある。

 「だからと言って、できないことで頭を悩ますのではなく、今できることは何かを考えることが大切。そのひとつは、原料を切らさないで製造し続けること。そして、いい意味でコスト管理を徹底させることである」

 原料や製造コスト、労務費、人件費など、手をつけられる部分はいくつもある。

 「売り方も慎重に考えて見極め、製品価値を維持しつつ、利益が取れる形を考えなければならない」と、焦ることなく、基本を徹底する姿勢を崩さない。

 同社は、ANTESのグループ企業。他には、医学や食品などの分野に研究用試薬を提供する「日研ザイル」、浄水器などを提供する「ゼンケン」、スポーツサプリメントのパイオニア「健康体力研究所」などがある。ライオン菓子の経営権は、平成15年(2003年)に日研ザイルが引き継いでいる。そのグループ理念は「健康貢献」だ。

 昨今、機能性に対する関心が高まってきており、お菓子でも機能性素材を積極的に取り入れた製品が数多く発売されている。飴では、機能性の代表的なジャンルである“のど飴”が好調。ANTESグループが得意とする分野だ。 

(続く)

 

【予告】

(後編)福島復興のための乳酸菌